「腸」は単なる消化器官ではない

 

腸は、食べ物を消化して、栄養素を吸収する場所であることから、消化器官として知られています。ところが、近年、腸は消化器官としての役割に加え、「免疫系」、「内分泌系」、「神経系」の働きが発達している重要な器官であることが明らかになってきました。
それぞれの役割を詳しく説明します。

1. 免疫系

 

免疫系は、体を外敵(ウイルス、細菌、異物)から守る防御システムです。腸はその中心的な役割を果たしていて、全免疫細胞の約70%が腸に存在すると言われています。

腸内細菌と免疫の関係

善玉菌(ビフィズス菌・乳酸菌など)は、腸内の炎症を抑え、免疫バランスを整える。

悪玉菌が増えると、免疫システムが過剰に反応し、アレルギーや自己免疫疾患を引き起こす可能性がある。

脳との関係

ストレスが腸のバリア機能を低下させ、リーキーガット症候群を引き起こし、炎症や免疫異常につながる。

逆に腸内環境が乱れると、脳に炎症性サイトカインが送られ、うつ病や不安症のリスクが高まる。

2. 内分泌系

 

腸は、ホルモンを分泌する「内分泌器官」としての役割も果たしています。
腸で作られるホルモンが脳に影響を与え、ストレスや感情、食欲を調整します。

 

代表的な腸ホルモン

セロトニン(幸せホルモン):90%が腸で作られ、気分を安定させる。腸内環境が悪いとセロトニンの産生が低下し、うつや不安症のリスクが高まる。

グレリン(食欲促進ホルモン):胃や腸で分泌され、脳に「空腹」を伝える。

レプチン(満腹ホルモン):腸や脂肪細胞から分泌され、脳に「満腹」を伝える。腸内細菌のバランスが崩れると、食欲が異常になり肥満の原因になる。

 

ストレスとの関係

ストレスを受けると、副腎からコルチゾール(ストレスホルモン)が分泌され、腸の働きが低下する。

逆に、腸内環境を整えると、ストレス耐性が上がる。

3. 神経系

 

腸は「第二の脳」とも呼ばれ、腸管神経系という独自の神経ネットワークを持っています。これにより、脳の指令がなくても腸は独立して働くことができます。

 

脳と腸の神経ネットワーク

迷走神経(自律神経の一部):腸と脳を直接つなぎ、情報をリアルタイムで伝達。
腸内環境が良いと、迷走神経を介してリラックス効果が高まる。

交感神経・副交感神経の影響:ストレスで交感神経が優位になると、腸の動きが鈍くなり、便秘や胃腸の不調が起こる。

 

 

腸内細菌と神経伝達物質

腸内細菌がGABA(リラックスホルモン)やドーパミン(やる気ホルモン)を生成し、脳の働きをサポートする。
腸内環境が悪化すると、これらの神経伝達物質が減少し、ストレスや不安の原因になる。

腸内環境を整えることは、免疫力アップ・ストレス耐性向上・メンタルの安定につながるので、発酵食品や食物繊維を積極的に摂るのが大切ですね!

 

消化以外の腸のはたらき―免疫系、内分泌系、神経系のイラスト